サステナビリティビジョン「TSV2050/2030」

東洋インキグループは、近年の気候変動対応やカーボンニュートラル、SDGsへの取り組みに関するグローバルの動向、および企業に向けられた要請が活発化している社会状況に対応すべく、グループのCSR/サステナビリティ活動の実践的な長期目標として、2022年1月、サステナビリティビジョン「TSV2050/2030」を策定しました。

図:TOYO INK GROUP Sustainability Vision/2022年/現在/SIC27/2030年/TSV2030/2050年へのマイルストーン/SDGs達成への貢献/2050年/TSV2050/カーボンニュートラル推進/1. 持続可能な社会を実現させる製品・サービスの提供/2. モノづくりでの環境負荷低減/3. 信頼される企業基盤の構築

今般東洋インキグループが策定したサステナビリティビジョン「TSV2050/2030」は、2050年を目標年に設定した「TSV2050」と、そのマイルストーンとして2030年を中間目標年に設定した「TSV2030」の二つで構成されます。
TSV2050は、当社グループがSIC-Ⅱ中期経営計画の中で宣言した『2050年におけるカーボンニュートラル達成』を中心に、さまざまなサステナビリティ活動を推進するための基本的なビジョンです。一方、TSV2030は、TSV2050の時間軸上のマイルストーンであるとともに、国連で提唱された2030年を目標年とするSDGs(持続可能な開発目標)の達成のための、企業グループとしての貢献を推進する中間目標です。

これら二つの目標からなるTSV2050/2030は、当社グループの価値提供の方向性である「持続可能な社会を実現させる製品・サービスの提供」「モノづくりでの環境負荷低減」「信頼される企業基盤の構築」の3つの柱で構成されており、当社グループのCSR、サステナビリティ、ESGに関するあらゆる取り組みのベースとなります。

1. 持続可能な社会を実現させる製品・サービスの提供

図:1. 持続可能な社会を実現させる製品・サービスの提供/TSV2030/サステナビリティ貢献製品売上高比率80%/ライフサイクル視点でCO2排出削減に貢献できる製品の拡大/TSV2050/全ての製品をサステナビリティ貢献製品に/お客様の脱炭素化に貢献 図:図:1. 持続可能な社会を実現させる製品・サービスの提供/TSV2030/サステナビリティ貢献製品売上高比率80%/ライフサイクル視点でCO2排出削減に貢献できる製品の拡大/TSV2050/全ての製品をサステナビリティ貢献製品に/お客様の脱炭素化に貢献

1-1. すべての製品をサステナビリティ貢献製品に

東洋インキグループは、早くから製品の環境調和性の向上に取り組み、1990年代からさまざまな環境調和型製品を世に送り出してきました。近年の当社グループの製品開発においては、そのような“環境価値”だけに留まらず、人々の暮らしの快適さ、健康・福祉、安全・安心といった方面にも目を向けており、その成果として、社会の持続可能性の向上に貢献できる(生活価値)多様な製品群を上市しています。
そこで、今回のTSV2050/2030の策定に合わせて、従来の環境調和型製品の基準に“生活価値を有する製品”の基準を加え、「東洋インキグループサステナビリティ貢献製品」として再定義しました。この定義拡張により、IoT・高速通信用デジタル関連素材やセンサー材料(自動運転の安全性、住環境の快適性)、バイオ・メディカル関連素材(医療、創薬、ヘルスケア)など、さまざまな生活価値を機能・特長とする製品群が加わります。

当社グループは、2050年までにこれらサステナビリティ貢献製品のグループ全体の売上高に対する売上高構成比率を国内外合わせて100%にすることを、また、その中間段階として、2030年までに同比率80%を達成することを定量目標に掲げます。

サステナビリティ貢献製品で定義する環境価値・生活価値とその方向性・事例

提供価値

方向性

キーワード

取り組みの事例

環境価値

環境と共生する
社会の実現

容器・パッケージ領域

リデュース

石油原料比率の低減・置き換え(バイオマス、水性化、UV/EB化)

リプレイス

製品構成の簡素化、紙への置き換え(生分解素材、機能性コーティング)

リサイクル

プラスチック循環を支える材料・システム展開(水平リサイクル支援素材・システム)

モビリティ・エネルギー領域

輸送のEV化

EV化加速に貢献する素材/技術の提案・先行開発(LiB材料、熱制御部材)

クリーンエネルギー・新エネルギー

地球環境に優しい新たな発電システムの開発・素材提案

カーボンリサイクル

CCUS(CO2回収・有効利用・貯留)技術への挑戦、CO2由来原料の活用

生活価値

快適・健やか・安全な社会の実現

メディカル・ヘルスケア領域

予防・診断

疾病の早期発見・予防と罹患リスクの縮小につながる診断用材料・システムの開発

治療

先進治療・セルフケアに貢献する医薬品・医療用素材の開発

安全・安心

生体への影響のない、安全で安心な製品の提供(有害物質を含まない製品)

通信・エレクトロニクス・デジタル領域

高速・大容量通信

フォトニクス・高速大容量伝送・高速演算を支える次世代素材群の開発

高度なセンシング

センサー社会・IoTでつながる社会の実現に向けたキー素材の提供

ビッグデータ

データ活用による便利な社会の実現につながる技術への挑戦

1-2. お客様の脱炭素化に貢献

もう一つの目標である「お客様の脱炭素化への貢献」は、当社グループと同様に低炭素化・脱炭素化・CO2排出削減を目指しているお客様企業に対するコミットメントです。BtoBの素材メーカーである当社グループが販売する製品を、製品ライフサイクルあるいはサプライチェーン全体で俯瞰すると、当社グループはお客様から見てサプライチェーンの上流に位置しており、当社グループの生産活動や企業活動によるCO2排出は、お客様にとってのCO2排出、とくに原材料に掛かるCO2排出量(Scope3カテゴリ1)などに大きく影響します。

お客様が取り組む低炭素化、脱炭素化、カーボンニュートラルをサプライヤーとして支援・協力するために、当社グループは、製品そのものに掛かるCO2排出量の削減(低炭素な原材料の選択、生産時の使用エネルギーの低炭素化など)に加えて、輸送の効率化や低炭素化、お客様サイドでの製品製造時におけるエネルギーや燃料の削減、消費者サイドでの廃棄時における易リサイクル性なども考慮した製品開発を進め、サプライチェーン全体でのCO2排出削減を推進します。

2. モノづくりでの環境負荷低減

図:2. モノづくりでの環境負荷低減/TSV2030/CO2排出量:国内35%削減(2020比)、海外35%削減(2030BAU比)/廃棄物外部排出量:国内50%削減(2020比)/有害化学物質排出量:国内30%削減(2020比)/TSV2050/生産活動でのCO2排出量を実質ゼロ、環境負荷を最小化/廃棄物の発生を最小化/持続可能な水利用を実現 図:2. モノづくりでの環境負荷低減/TSV2030/CO2排出量:国内35%削減(2020比)、海外35%削減(2030BAU比)/廃棄物外部排出量:国内50%削減(2020比)/有害化学物質排出量:国内30%削減(2020比)/TSV2050/生産活動でのCO2排出量を実質ゼロ、環境負荷を最小化/廃棄物の発生を最小化/持続可能な水利用を実現

2-1. 生産活動でのCO2排出量を実質ゼロ、環境負荷を最小化

東洋インキグループは、2010年度に「CO2削減プロジェクト」を発足して以来、国内・海外の生産拠点におけるCO2削減に取り組んできました。2018年度にスタートした長期構想SIC27では、新たな中長期環境目標を策定しました。これは、2030年度までに国内のCO2排出量を26%削減(2013年度比)するというものであり、かつ科学的なバックキャスティングによって、3年ごとの中期経営計画終了年度での中間目標値を設定したものでした。

目標達成に向けた全方位的な改革によって、2020年度の国内CO2排出量は、SIC-Ⅲ終了年度(2026年度)目標値である78,600t-CO2を大幅に下回る76,843t-CO2を達成することができました。そこで、2021年度にスタートした中期経営計画SIC-Ⅱにおいて、より厳しいレベルの目標として、「2050年度におけるカーボンニュートラル達成」を宣言し、TSV2050の中心的な目標に設定しました。

マイルストーンであるTSV2030では、国内のCO2排出量を2020年度比で35%削減の50,000t-CO2と設定しています(2013年度比で50%削減)。これを実現するための施策として、エネルギー使用量の削減、エネルギーの低炭素化、電力の低炭素化の3つの側面で諸施策を講じます。また、排出権取引によるカーボンオフセットもカードの一つとして用意しておくとともに、将来に向けたネガティブエミッション(排出量をマイナスにしていく取り組み)も視野に入れています。

CO2排出削減に向けた施策例

施策の方向性

施策例

エネルギー使用量の削減

省エネ(工程中のエネルギーロスの排除)、省エネ視点の生産プロセス改革

エネルギーの低炭素化

生産設備の電化(直接排出の削減)、LNG代替燃料の活用に向けた準備・調査

電力の低炭素化

低炭素電力の導入、再エネ設備導入

カーボンオフセット

排出権取引による排出量の相殺

ネガティブエミッション

CCUSなどの技術開発・活用に向けた準備・調査

図:国内CO2排出量(千トン)/2020年度76,843トン-CO2/2030年度50,000トン-CO2/2020年度比マイナス35%
図:海外CO2排出量(千トン)/2020年度118,786トン-CO2/2030年度95,000トン-CO2/2030年度BAU比マイナス35%

一方、今後事業の成長・拡大を狙っている海外拠点のCO2排出量については、2030年度BAU比※で35%削減の95,000t-CO2を設定しています。海外は日本と比べて間接排出の比率が大きい(エネルギーミックスが燃料よりも電力にシフトしている)ので、電力の低炭素化を中心に施策を推進します。

BAU比:事業の成長に伴うCO2排出増加に何の対策もしなかった場合(Business as usual)の排出量との比較

2-2. 廃棄物の発生を最小化

日本で廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)が施行された1970年代より、東洋インキグループは事業活動における廃棄物発生の抑制とリサイクル(再資源化)を推進し、廃棄物発生量の削減および全事業拠点におけるゼロエミッション※達成に努めてきました。
2020年度における国内の廃棄物外部排出量※は10,822tでしたが、その内訳は、廃油55%・廃プラスチック12%・廃水10%と上位3種で約8割を占めています。これらに焦点を絞り、効果的に施策を進めることで、2030年度までに廃棄物外部排出量を2020年度比で50%削減していきます。

廃棄物の内訳(国内2020年度)
図:廃油 54.7%/廃プラスチック 12.3%/廃水 10.7%/汚泥 6.0%/金属くず 9.9%/紙くず 1.6%/その他 4.8%

東洋インキグループが化学製造業であり、その生産活動を継続拡大する限り、廃棄物の発生は不可避です。しかしながら、廃棄物の発生しにくい生産プロセスの開発や廃棄物処理方法の検討、リユース・リサイクルなど資源循環の促進、廃棄物削減に関するノウハウのグローバル共有などを通じて、廃棄物外部排出量の最小化を目指しています。

ゼロエミッション:東洋インキグループでは、事業拠点での廃棄物の最終処分量が廃棄物発生量の1%以下と定義しています。2020年度は国内全体の廃棄物発生量に対する最終処分率は0.03%で、すべての事業所でゼロエミッションを達成しています。

廃棄物外部排出量:有価物として売却した量および事業所内で発生した廃棄物のうち、拠点敷地内で再資源化されずに放出した、もしくは処理業者に廃棄処理を委託するために事業所外に移動させた量

2-3. 持続可能な水利用を実現

東洋インキグループでは、工程水(水系の化学反応、生成物の洗浄処理などに用いる水)や冷却水、洗浄水として、多くの水を利用しています。水資源は東洋インキグループにとって重要な自然資本の一つであり、水利用のサステナビリティ向上を重要課題として認識しています。2020年度における用水の取水先のうち、約73%が地下水または工業用水(河川・湖沼からの取水)といった陸域淡水系からの取水でした。これまでも循環冷却の徹底、利用後のリユース・リサイクルによる水使用量の削減および廃水浄化に努めてきましたが、今後さらに水を必要としない生産プロセスの開発や新たな用水技術の導入などを通じて全般的な水使用量を削減し、環境保全や生物多様性保全を前提とした水利用に取り組みます。

また、廃水浄化については、当社グループは化学メーカーであるため、これまでも有害化学物質※の排出量の管理と削減に取り組んできました。2020年度における化学物質排出量は68.2tでしたが、漏洩や直接排出の防止を徹底するとともに、廃水処理設備のコストパフォーマンスの最適化を推進し、2030年度における有害化学物質排出量を2020年度比で30%削減します。

有害化学物質:ここでは、PRTR法第1種指定化学物質および日本化学工業協会指定物質群を合わせた物質群を対象にしています。

3. 信頼される企業基盤の構築

図:3. 信頼される企業基盤の構築/TSV2030/環境・社会調和な原料調達の実現/社員の多様性の尊重、自然・地域との共生/絶え間ないガバナンス体制の再構築/TS2050/サプライチェーン、人材・地域活動、ガバナンスを環境・社会貢献の視点で継続的に改革・変革 図:3. 信頼される企業基盤の構築/TSV2030/環境・社会調和な原料調達の実現/社員の多様性の尊重、自然・地域との共生/絶え間ないガバナンス体制の再構築/TS2050/サプライチェーン、人材・地域活動、ガバナンスを環境・社会貢献の視点で継続的に改革・変革

東洋インキグループは、あらゆる産業・市場の支え手として、人々の暮らし、地球環境とそこに生きるあらゆる生命の持続可能性向上に向けた企業活動を推進しています。そして、そのような企業グループであり続けるために、常にコーポレート・ガバナンスを改革し、企業としての持続可能性の向上に努めてきました。
TSV2050/2030においては、「信頼される企業基盤の構築」を柱として、2050年までの長期にわたって、「サプライチェーン、人材・地域活動、ガバナンスを環境視点・社会視点で継続的に改革・変革し続ける」ことを目標に掲げています。また、2030年度までの中間目標として、「環境・社会調和な原料調達の実現」「社員の多様性の尊重、自然・地域との共生」「絶え間ないガバナンス体制の再構築」を掲げ、それぞれに短期的・中期的な施策を推進しています。

これらの目標・施策の根底にあるのは、“東洋インキグループらしさ”です。化学メーカーだからこそ追求し続けなければならない「環境貢献」をリーディングするという責任感であり、1世紀以上にわたって“色彩”を扱ってきたことでマインドに培われてきた、十人十色、一人ひとりが唯一の大切な存在として、「多様性」が尊重されなければならないという思いであり、学術教育の普及のために印刷インキ製造を始めたという創業者から受け継がれた「コミュニケーションの大切さ」という考えが、この柱の基礎となっています。

図:東洋インキグループらしさ/化学メーカーだからこその「環境貢献」への責任感/色を扱う会社だからこその「多様性」尊重への思い/創業の意思を継承する「コミュニケーションの大切さ」の考え/環境・社会調和な原料調達の実現/CSR調達率の向上(環境、人権など自社基準を設定)/調達グローバルネットワーク・人材の強化(環境/人権関連原料情報)/サプライチェーンへの調達方針・基準の浸透の強化/サプライチェーン全体における廃棄物量の低減など/社員の多様性の尊重、自然・地域との共生/社員エンゲージメント率の向上(ES調査・働き方改革ほか)/地域環境・多様性推進のための地域コミュニケーション活動推進(件数)/環境、人権教育の実施推進(件数)/女性幹部比率の向上など/絶え間ないガバナンス体制の再構築/事業ポートフォリオを間断なく見直す取締役会の運営/気候変動対策の策定、気候変動リスクの分析と開示(TCFD対応推進)/非財務情報に関する数値目標の設定、取締役会による監督、積極開示/研究開発:環境価値・生活価値テーマへの開発資源シフト/設備投資:環境インフラ投資枠設定、社内炭素税の導入検討など

4. 推進体制

TSV2050/2030を着実に推進していく体制として、東洋インキグループは、2022年1月、グループ全社レベルのサステナビリティ活動の強化を目的に、これまでのCSR統括委員会を「サステナビリティ委員会」に改称・改組し、その下に「ESG推進部会」を新設しました。

サステナビリティ委員会は、代表取締役(グループCEO)を通じて取締役会の監督下に置かれています。サステナビリティ担当役員を委員長として、全社のCSR/サステナビリティに関するあらゆる活動における計画の策定、推進、評価およびフォローを実施し、グループ経営執行会議などを通じて経営層へ報告を行います。

ESG推進部会は、グループ本社(東洋インキSCホールディングス株式会社)の広報部門および経営管理部門を事務局として、TSV2050/2030に基づく全社サステナビリティ活動の推進と、気候変動対応に関する実務および推進、TCFD提言に基づく情報開示など社内外への発信をミッションとしています。

図:取締役会/監督/報告・提案/代表取締役 グループCEO/監督/グループ経営執行会議/報告/サステナビリティ委員会/委員長:サステナビリティ担当役員/事務局:グループ広報室、グループ経営部/全社CSR/サステナビリティに関するあらゆる活動における計画策定・推進・評価・フォローの実施(経営層への報告)/ESG推進部会/事務局:グループ広報室、グループ経営部/TSV2050/2030に基づく全社サステナビリティ活動の推進/気候変動対応に関する実務および推進/TCFD提言に基づく情報開示など、社内外への発信/コンプライアンス部会/事務局:グループ法務部/経営に関する法令遵守と企業倫理確立の推進/全社コンプライアンス活動の企画・推進、社内外への発信/リスクマネジメント部会/事務局:グループ総務部/全社リスクマネジメント活動の推進/リスク発生の未然防止とリスク被害の軽減策の推進/全社環境安全マネジメントシステムの推進